お墓の閉じ方

第4回 お墓の閉じ方

 15万1076件。この数字は、2022(令和4)年、厚生労働省発表の墓じまい件数です。墓じまいは、年々増加傾向にあり、ここ20年間で約2倍となりました。特に都市部での件数増加が顕著で、少子高齢化の波が遺骨の行く先へ波及してることが分かります。遺骨の引越し先としては、海洋散骨、樹木葬、納骨堂、永代供養墓(合祀)、お墓などが挙げられます。

では具体的にどうのように手続きを進めていくのかを確認します。


目次

  1. 骨と海の構成
  2. 旅の始まり
  3. 3つの旅先
  4. 自然とのつながり

-行き先を決める-

 まずは、墓じまい後の遺骨の行き先を決める必要があります。お墓を閉めるので、その後、保存される若しくは自然に還らない改葬を選ぶ方は少ないかと思います。例として樹木葬(陸地の行き先)と海洋散骨について説明します。

樹木葬の場合は、樹木葬を行なっている管理者へ連絡し、申し込みを相談します。受け入れが可能であった場合、お墓の管理者へ墓じまいを希望する旨を伝え見積もりや日程の打ち合わせを進めます。注意点として、一昔前にトラブルになりやすかったのが檀家の離檀です。お寺も離檀されると経営が難しくなるため、引き止めにあったり、高額な離檀料を請求されることがあったようです。この一環で一部をお墓に残し、分骨した遺骨を散骨するため、海洋散骨は一部の遺骨しか散骨できないという疑念を持たれている方が多いようです。

体感としては、現代の少子高齢化の事情からお寺も墓じまいの背景を納得しており、トラブルは少なく感じています。むしろいきなり事業者が間に入って進行するより、ご家族で感謝の気持ちを持って相談した方がスムーズに進行すると感じています。

無事に墓地管理者と改葬先の承諾を得たら、次に市町村役場にて改葬申請をします。改葬申請書には、墓地管理者の埋葬証明などと改葬先の受け入れ証明などが必要となります。申請に必要な書類が揃ったら申請を行い、改葬許可証が発行されます。その後、実際に墓じまいを行い、遺骨を改葬先にて供養します。

続いて海洋散骨の場合、基本的な手続きは、樹木葬の場合と変わりません。1点だけ特殊なのが、行政(市町村役場)への申請です。海洋散骨は、1991年に当時遺体遺棄に当たると考えられていた法律解釈を違憲であるとし、自然葬を進める会が相模灘で海洋散骨を敢行した歴史があります。当時の総務省は、これを追認し、「節度を持って葬祭の一つとして行われる限りは遺骨遺棄罪に違法しない」との見解を示しました。しかし、墓地埋葬法や厚生労働省発出のガイドラインによって海洋散骨事業が担保されていますが、海洋散骨を定めた法律が存在しないのが現状です。(条例は存在します。)

ここで改葬を申請した市町村によっては、改葬先が海洋散骨であった場合、法的根拠がないことから申請自体を受けていない市町村が多く存在します。例えば、私たちの拠点である鎌倉市は、改装場所未定の処理で申請を受理し、改葬証明を発行してくれます。お隣の横浜市の場合は、申請が受理されないため、改葬申請書に記入された故人情報と墓地管理者のサインと捺印により、海洋散骨を承る根拠としています。また、市町村役場は、前例踏襲傾向がある一方、人事異動による担当者の解釈によって差異があるため、今後、受理される市町村も出てくると予測します。そのため、都度確認することが留意点になります。

-墓じまい当日-

いよいよ墓じまいの日を迎えると、管理墓地やお寺の管理者と提携のある石材屋さんが現地で待っています。まずは、お寺の住職などによる閉眼供養(魂抜き)が行われます。閉眼供養については、宗教観によって誰が行うかが違ってきますので、ご家族で相談の上、決定するのが良いかと思います。続いて石材屋さんによるお墓の解体作業を行います。無事にお墓の下台を取り除いたらいよいよ遺骨出しの工程です。骨壺に名前(俗名)が書いてある場合や納骨の年代が明らかに違う場合は、どなたの遺骨か判別が付きやすいですが、情報がない場合は判別がつかないこともあります。夫婦の場合は、遺骨の大きさなどで判別ができる場合もあるかと思います。また、地域や昔の風習で遺骨を骨壷から出し、直接カロート(遺骨を納める空間)の土へ納骨した場合は、さらし袋などに遺骨を納めてくれます。お墓によっては、親族や祖先の状況から実際に開けてみないと何霊分の遺骨が入っているかわからない方もいるでしょう。 

遺骨出しが終わったら、その遺骨をそのまま自宅や改葬先へ持ち帰るか、改葬先に墓地まで取りに来てもらうかなどの選択肢があります。

-費用-

費用については、墓じまいと改葬先の構成によって決まります。

墓じまいにかかる費用

・お墓の撤去費用:20万円〜70万円ほど

・お布施代:3万円〜10万円

・離檀料(檀家の場合):0円〜20万円

改葬先にかかる費用

・海洋散骨:5万円〜

・樹木葬:20万円〜

・手元供養:0円〜

・お墓:平均120万円ほど

・納骨堂:30万円ほど

上記の費用構成且つ、檀家入などを考慮すると30万円から300万円ほどと幅広い価格帯が考えられます。鎌倉市の場合は、お墓の撤去費用が平均的な地域に比べ高いというお話をご家族様よりお聞きしたこともあります。

また、自治体によっては、墓じまいの墓石撤去工事費用を補助金として交付している市町村もあるため、ご自身の自治体が制度化しているか確認してみましょう。

文 中込 大樹

参考資料

・衛生行政報告例/令和4年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です