魂の行方
第3回 魂の行方
これまでてのひらの終活マガジンでは、物理的な骨の行方を追ってきました。第3回目の今回は、魂はどうなるのといった疑問を整理していきます。
魂を辞書で引くと「生きものの体の中に宿って、心の働きをつかさどると考えられるもの。」と出てきます。死後、体は残るが意識や心がどこへ向かうのか、また、消滅するだけなのかは、現在までに科学的に証明されていません。そこで大きな役割を果たすのが宗教観です。葬儀とは、この宗教観に基づき死者の魂を送り出す儀式なのです。今回は、仏教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、神道の宗教観を整理します。もちろん各宗教には宗派が多く分岐し、宗教観が変化するので代表的な例をここでは述べます。
目次
- 仏教
- 神道
- キリスト教
- ユダヤ教
- イスラム教
・仏教
仏教では、輪廻転生が信じられ死者の魂は、またどこかで生まれ変わるとされています。
日本のお葬式では、仏式が一般的で、四十九日という忌日法要も仏式が採用されています。代表的な例が三途の川や閻魔王が登場する7日ごとの忌日法要です。亡くなってから7日目を初七日といい三途の川に到着する日とされています。以降はこのように続きます。
二七日(生前の盗みの罪を調べられる日
三七日(生前の不貞の罪を調べられる日
四七日(生前の嘘について裁きを受けます
五七日(閻魔王によって来世に生まれ変わる世界を決定します
六七日(生まれ変わる条件の詳細を決定します
七七日/四十九日(来世の行き先を言い渡されます。
この来世の行き先を六道と言い、天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道に分け、生前の行いや罪によって魂が転生すると考えられています。また、生前の修行によって煩悩を払いさり、この六道から抜け出す解脱こそが仏教の目的とされ、解脱した魂は、浄土や極楽の世界に行くことができます。
・神道
日本発祥をルーツとする神道は、古来より自然への畏敬畏怖が信仰化された宗教であると考えられています。そのため、死者の魂は、産土神と言われる故郷の守護神の森へ帰っていくとされています。そこで子孫を見守り、ご先祖様として家の守護神になり、正月やお盆には家族の元へ帰ってきます。これは、日本の伝統的な文化として根付いています。この信仰は山中他界信仰であり、別に神道の中にも天上他界、夜見、常世として六道のような他界も信じられおり、古事記、万葉集、日本書紀では様々な他界が描かれています。
神社本庁によると「神道は来世中心信仰ではなく、現世中心の信仰であると言って良いだろう。」と記されています。
・キリスト教
キリスト教は、ユダヤ教から広がり、イスラム教誕生へ影響を与えた歴史があります。宗派も多岐に渡ることから、代表的な例を挙げると魂は、最後の審判の日に復活すると考えられています。復活すると生前の信仰や行いによって神により天国か地獄に送られ、永遠を過ごすとされています。
・ユダヤ教
ユダヤ人の中で誕生したユダヤ教は、自身の民族の楽園エルサレムと言う理想郷の実現を待っています。逆に楽園でない現在は、サタンが支配しており、神の最後の審判によってサタンの支配が終わる「終末」が来ると信じています。そのため、死後については、地獄などが想定されているわけではなく贖罪の日によって悪がなくなり、シェオルやハデスと呼ばれる黄泉で一時的に待機をするようです。
終末が訪れ理想郷が実現した際にユダヤ人だけの楽園が現れ、究極的な目標地として描かれています。
・イスラム教
イスラム教では、復活が根強く信仰されており、復活の日に際し肉体を結び付けるために火葬ではなく土葬で葬送します。復活は、最後の審判の日にするとされ、それまでの間、土葬中の魂は身体と切り離され中韓冥界であるバルザフで待機することになります。ここでは、生前の信仰によって天国的、地獄的な経験に別れるのだそうです。最後の審判の後、罪人は永遠の地獄ジャハンナムへ行きます。また、天界は崩れさり永遠の天国であるジャンナが出現し、信仰のある者はそこで永遠の幸福を手に入れます。
今回は、様々な宗教観を確認し、輪廻転生や復活など信仰によって魂の考え方が大きく違うことが分かりました。結果的には死生観や心の在り方によって魂の行き先は、残された者の気持ちで変化するものなのかもしれません。
文 中込大樹
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